198-衆-国土交通委員会(2019/5/22、2019/5/24)
余裕工期で安全確保
清水氏 建設業等改正で要求
日本共産党の清水忠史議員は22日、衆院国土交通委員会で、建設業等改正案の質疑を行い、建設業で余裕ある工期を実現し、働く人々の安全を確保することができるよう政府の取り組みを求めました。石井啓一国交相は「工期の適正化は、労働災害の防止など現場の安全確保にも寄与する」と答弁しました。
清水氏は、東京オリンピック・パラリンピック開催に向け、工事の進む新国立競技場の建設現場で、下請け業者の労働者が労災事故で亡くなった問題で、労働者が1カ月に200時間近い時間外労働をしていた原因を追及。「労働者が従事していた工事の工期は適正だったか」と質問しました。スポーツ庁の斎藤福栄総括官が「契約期限で完了した」と答弁したのに対し、清水氏は、労働者が地盤改良工事を担当し、工事の途中で地中の障害物が見つかり、工程の遅れを取り戻すために忙しくなったことを指摘。「10日遅延完工したと報道されている。想定外の遅れが生じることはある。発注者が工期までの完成を急がせれば、長時間労働は是正されず、建設現場の安全確保もできない」と強調しました。
清水氏は、同法案で「工事の注文者が著しく短い期間を工期とする請負契約を締結してはならない」としていることは重要だとし、「せめて公共事業に関しては、国交省が工事期間を主体的に確認する姿勢が重要だ」と主張しました。(赤旗2019/5/29)
議事録(5/22建設業法、5/24公共工事品確法)
◆2019/5/22 衆議院国土交通委員会
○清水委員 日本共産党の清水忠史でございます。
建設業法及び公共事業の入札及び契約の適正化の促進に関する法律の一部を改正する法律案について質問いたします。
先日十五日までに、ゼネコン主要二十六社の一九年三月期の決算が出そろいました。連結ベースの売上高が初めて二兆円を突破した大林組を筆頭に、大手ゼネコンらの業績は好調でありまして、二十六社中十九社が増収、そのうちゼネコン大手四社、清水、大成、鹿島、大林は、今期、新規受注高が六年連続で五兆円台になるなど、大もうけしております。
これだけ大もうけしていれば、普通なら、建設業界のイメージもよくなりまして、学生の方々も建設業で働きたいな、こういうふうに入職を希望するようになり、人手不足にあえぐことにはならないはずだと思うんですね。ところが、現実はそうなっておりません。
本年五月七日、日経クロステックウエブの記事に掲載された独自調査を私、見まして、驚きました。ここでは、身近な若者や自分の子供に建設業界への就職を勧めたいと思うかという問いに対し、一般の人で、非常にそう思うと回答したのは、何とわずか一%なんですね。ややそう思うと答えた方と合わせても一二%にとどまる。何よりも、建設業界で働いている方々ですら、同じ設問に対して、非常にそう思う、ややそう思うと答えたのは合わせて二四%しかおりませんでした。全くそう思わない、余りそう思わないと答えた方が合わせて五割なんですね。
つまり、建設業界で働いている方々も、建設業で働くのは勧めない、自分の息子や若者たちに勧めたくない、こう思っている現実というのをやはり改善していかなければならないというふうに思うんです。
なぜ勧めないのかというのは、一般の方も、あるいは建設業で働いている方々も共通しているんですけれども、労働時間が長い、それから危険を伴いそう、そして給料が安そうというふうになっているんですね。労働時間が長いというのをきついというふうな表現に置きかえるならば、まさしく、きつい、危険、安いという三拍子そろいまして、建設業界を敬遠してしまうということが、昨今、建設業界の著しい人手不足になっているのではないか、とりわけ若い人たちの入職を阻害している要件ではないか、こういうふうに考えます。
これらを是正することが本改定案のやはり目的でなければならないというふうに思いますので、その立場に立って質疑をさせていただきたいと思います。
初めに、長時間労働の是正、工期の適正化について質問します。
新名神高速道路、高槻―神戸間の工事は、実に六名の死亡者と多数の負傷者を出した工事です。この工事について、発注元のNEXCO西日本は、事故現場を含む高槻から神戸の間の距離、約四十・五キロですが、この工期を二年間前倒しをする方針を二〇〇九年に示しておりました。
国交省は、この工期前倒しの方針について事前に把握されていましたでしょうか。これは道路局長にお尋ねしたいと思います。
○池田政府参考人 新名神高速道路の高槻ジャンクションから神戸ジャンクションの間の開通目標につきましては、平成二十一年の十二月に、平成三十年度の目標から二年前倒し、平成二十八年度の目標にする旨をNEXCO西日本が発表したものと承知をしております。
この発表に際しまして、事前に、この件については、当時の関係者に聞きましたところ、国交省の方には相談はなかったというふうに聞いております。
○清水委員 事前には聞きおいていなかったということですが、三十年度の完成工期を二十八年度に前倒ししたことについては、そのことは発表の後は御存じだったということだというふうに思います。
この前倒しが適正だったのかどうかということが非常に問題でして、例えばこの新名神高速道路でいいますと、二〇一六年四月に神戸市北区で起きた橋桁落下事故では、お二人の方が亡くなり、八人がけがをいたしました。事故から三年たちました先月に、当時の元請業者の現場所長に有罪判決が下されております。
地元紙によりますと、落下前の橋桁は鋼材や支柱を組んでつくった土台の上に置かれていたんですが、作業員からは土台の強度不足を不安視する声が上がっていたそうでございます。ただ、工事が大幅におくれていたために、今さら組み直せないなどとしてそのままにされたというんですね。当時、現場で働いていた方々も残業続きだったというふうに言われております。前日に土台がずれているという情報も寄せられたわけですが、多くの作業員は橋桁に乗ったまま作業をしていたということなんですね。まさしく命にかかわる場面で安全より工期が優先されたのではないか、このように報じられているわけなんです。
著しく短い工期による請負契約の締結を禁止するという本改定案は、長時間労働を是正することはもちろんのこと、それにとどまらず、やはり、このような事故を根絶していく、建設現場の安全確保につながっていく、そういう法案であるべきだというふうに思うんですが、石井国土交通大臣の所見をお聞かせください。
○石井国務大臣 本法案では、著しく短い工期での請負契約の禁止など、工期の適正化を図る規定を設けることとしておりますが、その目的の一つは、建設業の働き方改革を進める観点から、適正な工期設定を通じて長時間労働を是正することであります。
加えて、今回の改正によりまして、発注者の理解も得て適正な工期が確保されれば、余裕を持った工程管理が可能となり、例えば、長時間労働による注意力の低下の防止、現場就業者に対する安全教育の時間の確保が図られるという効果をもたらすものと考えられます。
この点で、工期の適正化は、労働災害の防止など、現場の安全確保にも寄与するものと考えております。
○清水委員 ありがとうございます。
労働災害の減少にも寄与するものだという御答弁をいただきました。
ところで、今大臣の方からも答えていただいたんですが、適切な工期を設定する、ゆとりある工期を設定するということが長時間労働を是正していくんだ、そして労働災害を減少していくんだというこの法案なんですが、実は、ちまたに、私も驚いたんですが、工期短縮を促進するという書物が出ているんですよね。
私もびっくりしたんですが、ここでは、工期短縮にはさまざまなメリットがあるというふうに書かれておりまして、例えば、工期短縮が人手不足の解消につながることを御存じだろうか、このように書かれていたり、あるいは、工期短縮によりまして建設工事現場の最重要課題である労働者の安全を守ることができるかもしれないというふうに書かれているんですよね。
表面だけ切り取っていろいろ言うつもりはないんですが、まさしく、今回、適正な工期をとろうというふうに言っているのに、工期を早めることによって、短縮することによっていわゆる長時間労働をなくすだとか労働災害をなくすだとか、真逆のことを推進しているような本を読みまして、私、非常に違和感を感じたわけなんですね。
更に言うと、早く終われば次の仕事で稼げるから早く終わらせるべきだとか、絶対工程を算出して余裕工程は後回しにする、そのことが工期の短縮になるということなども提唱しているわけなんです。私はこれは、先ほど紹介しました事故の問題などを捉えましても、実態を見ないものだと言わなければならないと考えております。
私は石井大臣の決意をお伺いしたいんですが、今後も、建設現場では、利益確保のため、発注者やあるいは最上位下請が利益を上げるために、工期を短縮しなさいという圧力をいわゆる下請などにかけていくということも考えられると私はこの本を見て懸念したところなんです。
国交省として、あくまでも、本法案の趣旨、長時間労働を是正する、いわゆる生産性を向上し、若い人たちの入職を促進する、そして労働災害を減少させていくというこの趣旨を徹底し、やはり適正な工期をしっかりと確保していくんだ、著しい短い工期は禁止をするんだということでこうした巻き返しなどを退けていく、そういう強い決意をぜひ聞かせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
○石井国務大臣 適正な工期設定を進めることは、建設業の働き方改革の推進に加え、将来の担い手確保のために極めて重要と認識をしております。
適正な工期の実現に向けては、発注者のみならず、元請事業者や上位下請業者を含む関係者の理解と協力を得ながら、下請契約においても工期の適正化を進めていくことが不可欠であります。
このため、本法案においては、発注者、受注者、有識者の三者で構成をされます中央建設業審議会で工期に関する基準を策定をし、請負契約の当事者に勧告をしてまいります。
国土交通省といたしましては、発注者や元請事業者を含む関係者に対し、本法案の趣旨や適正な工期の必要性について周知徹底を図っていく所存であります。
○清水委員 ぜひとも、周知徹底、努力をしていただきたいと思います。
次に、賃上げの問題について質問させていただきます。
公共工事の設計労務単価は七年連続で上昇しております。二〇一二年に比べても約四割上がっているんですね。しかし、現場の、特に中小の建設業の現場では、賃金の上昇というものは本当に微々たるものだということなんです。設計労務単価と日給の格差が広がるばかりだという全建総連の方々の調査も見せていただきました。
このように、設計労務単価というのは、本来は賃金に適正に反映されなければならないはずなんですよね。ところが、そうなっていない。
私、質問したいんですけれども、本改定案では、下請代金のうち労務費相当分を現金払いにするということが記されております。手形ではだめですよ、ちゃんと現金払いしてくださいよと。これは必要なことだと思います。重層的な下請構造のもとで、この業界の中では、やはり労務費そのものが低く抑えられているということもあると思うので、そのあたりもしっかり目配りをしていくということが重要でしょう。
同時に、暮らしていける、やはり建設業で働くことが魅力あるという適正な賃金を受け取るためには、やはり、法定福利費、それから、これは建設職人基本法でも求められたものですが、安全衛生経費、これらが現場労働者に対して、下請まで確実に支払われなければならないと思うんです。それも含めて労務費だということでがっちゃんこして支払われるということになれば、これは正確に賃金に反映されないということになると思うんですね。
資料の一をごらんいただきたいと思います。この資料の一は、法定福利費の受取状況、実態調査の結果ということで、国土交通省に出していただいたものなんです。
この法定福利費がどれだけ受け取られているかということなんですが、公共事業では、一次、二次下請で法定福利費を一〇〇%以上確実に受け取れた工事の割合が約六割を超えておりますけれども、三次以下では約四割しか受け取れていないということがわかっております。また、民間発注工事でも、三次下請以降になりますと、一〇〇%以上法定福利費を受け取ることができたのはやはり四割にとどまっているわけですね。
ですから、確実に支払われていないわけなんですよ。場合によってはゼロ%から二〇%といって、ほとんど法定福利費が受け取られていないというようなことも国交省の調べで明らかになっているわけです。
私、思うんですけれども、安全衛生費も含めまして、最下位の下請事業者にまで支払うことを確実に行うためには、もちろん、国交省さんはこれまでも内訳明示ということで努力されていることは承知しているんですが、やはり実態がこうなっている以上、もう一歩踏み込んだ取組というのがこの法定福利費などを一〇〇%しっかり払わせていくという上で重要だと思うんですが、そこはいかがですか。
○野村政府参考人 お答えいたします。
委員御指摘のとおり、例えば法定福利費に関しましては、内訳明示をされた標準見積書の活用の徹底、あるいは標準請負契約約款にもそういう記載を盛り込むというふうな取組を行うということをやってまいりました。
一方で、今御紹介された調査のように、下請次数の高い企業ほど必要な法定福利費を受け取れていないということも調査の結果では見てとれているところでございます。
それから、安全衛生経費につきましても、これは労働災害防止対策を適切に実施する上で必要な経費でありまして、これも建設業法令遵守ガイドラインによって企業を指導してきたところでございますけれども、更に、現場で安全に安心して働くことができるように、安全衛生経費の確保に向けた取組を進めることが重要と考えております。
そのために、私どもとしては、例えば、ちょうどつい先日、今月十五日には、建設業団体あるいは発注者団体、行政関係機関等を構成員とする建設業社会保険推進・処遇改善連絡協議会、こういったものを組織しているんですけれども、そこにおいて、活用がおくれている市区町村発注工事を始めとして、公共、民間工事における見積り、契約段階での法定福利費内訳明示の活用徹底を図ること、あるいは、公共工事においては特に、その実施に関する数値目標、目標年度を設定し、これをフォローアップすることなどについて本年度における協議会の重点課題としたところであって、今後、具体的に取り組むべき施策について、更に取りまとめを行うということにしてございます。
それから、安全衛生経費でございますけれども、建設職人基本法に基づく基本計画を踏まえて、現在、建設工事における安全衛生経費の確保に関する実務者検討会を設置しまして、実態把握なども踏まえながら議論を行っているところでございます。
これにつきましても、本年三月から五月にかけて、施策を検討するために必要な基礎データの作成を目的といたしまして、建設業者に対して、建設工事の安全衛生経費の実態に関する調査を実施しております。
今後、この調査の結果を踏まえながら、検討会において更に意見をいただきつつ、安全衛生経費が下請負人まで適切に支払われるような施策の検討を進めていきたい。
法定福利費と安全衛生経費、一緒にお答え申し上げましたけれども、そのようなことを今後考えております。
○清水委員 さまざまな取組を検討されているということでございますので、ぜひ、もう一歩踏み込んだ取組を強化していただきまして、法定福利費、安全衛生経費、確実に支払われるよう努力をしていただきたい。要望しておきたいと思います。
次に、特定技能一号と認定された建設現場で働く外国人労働者の問題について伺います。
特定技能を持つ外国人建設労働者については月給制を採用するというのが国交省の方針だということを伺いましたが、これは間違いありませんか。間違いないかどうかだけ。
○野村政府参考人 建設業におきましては、受注状況や季節により業務の繁閑が生じやすく、工事現場で働く技能者について、例えば日給制や時給制を採用している場合は賃金の変動が発生することがございます。
このため、建設分野における特定技能外国人の受入れに当たっては、当該外国人にとってわかりやすく、そして安定的な処遇を確保するという観点から、月給制による賃金支払いを求める方針としております。
また、安定的な処遇の実現は、有為な外国人材の確保や不当、不安定な待遇を理由とした失踪等の発生防止にもつながるものと考えております。
○清水委員 月給制を採用する方針だということがわかりました。
特定技能の外国人に月給制を適用するというのであれば、同じ外国人の建設業の技能実習生や、あるいは東京オリンピック・パラリンピック関係に従事されている外国人建設就労受入れ事業でも、やはり月給制を採用するべきではないかというふうに思うんですが、このあたりは検討されているんでしょうか。
○野村政府参考人 お答えをいたします。
外国人材に対する安定的な処遇の確保に向けて、建設分野の技能実習生それから外国人建設就労者についても、やはり、賃金の支払いにおいて、より配慮された手続を求めるということが妥当だろうと思っておりますが、これは、制度が技能実習も就労者制度も進んでおるということで、既存の制度ということもございますので、関係機関と十二分にすり合わせる必要がございますけれども、この技能実習生や外国人建設就労者につきましても月給制による賃金支払いが可能となるかどうか、そういう方向で、現在、それらの関係機関とともに検討を進めているところでございます。
○清水委員 検討を進めているということでありました。
やはり、不当な処遇をなくし、日本人と同等以上の報酬を支払っていくということでありますので、ぜひその徹底を求めていきたいというふうに思います。
最後に、新国立競技場の問題について質問をしたいと思います。
五月十七日に、衆議院国土交通委員会といたしまして、二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピックの開会式や陸上競技が行われる新国立競技場の建設現場を視察させていただきました。
ここでは、日本スポーツ振興センター、JSCから、新国立競技場整備事業における健康管理に係る取組について説明を受けました。
ここでは、時間外労働の短縮化の促進を目的に、現場内詰所の原則二十時閉所などを徹底するということに取り組んでいるということを御紹介いただきました。非常に大事なことだと思うんです。九時から五時にするとか、残業は六時までしか認めないとか、あるいは作業開始前に健康チェックをするとか、あるいは、相談窓口を求めて、すぐに悩み事や精神的な苦しさがあるときには連絡をしてください、そういう相談窓口が求められているということなど、さまざまな取組が行われていることを教えていただきました。
これらが導入された経緯について、きょうはスポーツ庁に来ていただいているんですが、教えていただけるでしょうか。
○齋藤政府参考人 お答えいたします。
新国立競技場の整備事業において、平成二十九年三月、下請事業者の従業員が過労により自殺する事案があり、これを契機として、労働基準監督署から元請及び下請の一部事業者に対し、時間外労働が一カ月八十時間を超えたケースがあること、労働時間の……(清水委員「済みません、もう少し大きな声で」と呼ぶ)失礼いたしました。時間外労働が一カ月八十時間を超えたケースがあること、労働時間の把握が不十分であることなどが指導されました。
これらを踏まえ、元請事業者である大成建設JVにおいて、先ほど御紹介のありましたとおり、全従事者の健康管理に係る取組として、現場内に健康相談室を設置し医師や看護師を配置すること、現場内事務所の二十時閉所を徹底するなど、時間外労働を短縮化することなどに取り組むこととしたものであります。
○清水委員 二〇一七年三月に、新国立競技場建設現場の一次下請の従業員が二十三歳という若さで過労自殺をされた。この方は、一カ月に二百時間近い残業、時間外労働が認定されているわけでして、こうしたことを是正するということで始まった取組だということの回答でした。
どうして、この亡くなられた現場作業員はこのような過酷な時間外労働をしなければならなかったのかということが問題になるんですよね。
この労働者が従事していた工事の工期が、地盤改良工事に携わっていたというふうに私、承知しているんですが、そもそもこの工期が適正だったというふうにJSCは見ていたんでしょうか。それはスポーツ庁、把握されていますでしょうか。
○齋藤政府参考人 平成二十七年八月に関係閣僚会議が決定した整備計画においては、新国立競技場の完成が大会に確実に間に合うよう、工期の期限は二〇二〇年四月末とした上で、国際オリンピック委員会等の要請を踏まえ、同年一月末を工期短縮の目標とした技術提案を求めております。
これに対して、大成建設JVから、技術提案において、法令遵守を前提として、工期の期限を二〇一九年十一月末とする提案がなされ、発注者である日本スポーツ振興センターの技術提案等審査委員会で学識経験者が審査をし、工期短縮の信頼性が高いと評価されたものであると承知しております。
○清水委員 いや、そうじゃなくて、新国立競技場全体の工期のことを今おっしゃったと思うんですが、私が聞いているのは、この過労死された方が取り組んでいた地盤改良工事の工期が適正だったというふうな認識だったのかどうか。
きょうは、この法律は、いわゆる長時間労働をなくすということで、適正な工期を求めていくという審議をしているわけですからね。この私の質問にちゃんと答えていただきたい。もう一回お願いします。
○齋藤政府参考人 御指摘のありました地盤改良工事につきましては、当初、二〇一七年の四月三十日を末とする契約が結ばれておりました。
ただ、実際には、地中障害物が出てまいりまして、これは想定していなかった事態ということでありまして、これにより、当該地盤改良工事については延長が必要になったという状況がございます。
これについては、当該地盤改良工事の契約自体を四月三十日の契約期限から六月三十日まで延長した上で対応したというふうに承知をしております。
○清水委員 それで、工事は六月三十日に完了したんでしょうか。
○齋藤政府参考人 本件については、JSCに確認をさせていただきましたが、六月三十日で完了しているというふうに報告を受けています。
○清水委員 これは日本経済新聞、二〇一七年七月十四日のウエブ記事によるものなんですが、この過労自殺された男性の会社は、地盤改良工事自体の工期は二〇一七年六月三十日、今言われたとおりなんですが、十日おくれの七月十日に完工した、このように答えているんですよね。報道されています。
ですから、今言われたこととは矛盾するんですが、いずれにしても、おくれていたということは間違いないというふうに思うんですよね。
確かに、最初の四月三十日までという工期については適切だったかもしれませんが、やはり現場というのは生き物です。今言われたように、地中障害物が見つかって、工期そのものを延ばさなければならない。しかし、その地中障害物を取り除くためには、当初予定していなかった新たな重機だとか新たな作業だとか、そういうものが生じるわけですから、もともと設定していた工事期間とは、当然その幅が変わってくるということは容易に考えられるわけなんですよね。
実は、この問題で、私たち日本共産党の国会議員団は、二〇一七年八月一日に、JSCの方々と懇談をして聞き取りさせていただいたんですが、ここで、JSCの担当者が、作業の時間やボリューム、仕事量ですね、そこまで審査したわけではないと。もともとの工期期間についても細かく見たわけではないということを吐露されているわけです。この場には、国交省の方もスポーツ庁の方もおられたわけなんですね。
ですから、私は、本当にこの法案の、著しく短い工期を禁止する、本当に長時間労働を是正し、労務災害を減少させていく、そういう法律の実効性をしっかり担保させていくということが大事だと思うんですね。それでこそ、この法案の背景から生じた問題意識を具体化し、目的である週休二日を実現していこう、週休二日ができたとしても賃金は減ることのないように、若い人たちが入職できるように努めていこう、この法案の狙い、目的を実現させていくことができるんじゃないかなというふうに思うんです。
最後に、石井大臣にお伺いしたいと思います。
今回、この法案が、著しい工期を、請負契約を締結してはいけないと新設させたことは本当に重要だと思うんですが、これを実効あるものにするためには、やはり、問題が生じてから、それを把握してから是正するということもそれはもちろんあると思うんですが、せめて、入契法が適用される公共事業、これに関しては、国土交通省が工期期間を主体的に確認する、チェックする、そして問題があれば指導する、そういう姿勢が重要ではないかというふうに思うんですが、いかがでしょうか。
○石井国務大臣 今般の法案では、公共工事の発注者が取り組むべき事項を定める適正化指針の記載事項に、公共工事の施工に必要な工期の確保を追加することといたしました。
さらに、公共工事を含む全ての建設工事の請負契約について、中央建設業審議会において工期に関する基準を策定し、その実施を勧告することといたしました。
また、著しく短い工期による請負契約を締結した場合において、特に必要があると認めるときは、発注者に対して必要な勧告をし、勧告に従わないときはその旨を公表することができることとしております。
全ての公共工事に関しまして、国土交通省が主体的にその工期を確認することは困難と思いますが、今般の法案に盛り込まれた措置を通じまして、適正な工期の確保が実効性あるものとなるよう努めてまいりたいと考えております。
○清水委員 確かに、全ての公共事業をチェックするというのは一足飛びにできるものではないと思いますが、入契法に基づく公共事業というのであれば、先ほど私が述べました新名神高速道路や、あるいは今回の新国立競技場の建設現場も含まれるわけですから、ぜひ努力をしていただきたいと思います。
建設業が若者にとって魅力ある産業として発展していくためにも、長時間労働や事故をなくし、たくさんの賃金を受け取って働き続けることができるものにしていくことが求められているというふうに思います。我が党も努力することを申し上げて、質問を終わります。
◆2019/5/24 衆議院国土交通委員会
○清水委員 日本共産党の清水忠史です。
公共工事の品質確保の促進に関する法律の一部を改正する法律案起草の件につきまして、発議者の方々に法案提出の趣旨について確認させていただきたいと思います。
初めに、中野洋昌議員に説明をしていただきたいと思います。
本法案は、公共工事の施工時期の平準化により労働環境の適正な整備を図るとしております。
公共事業の施工時期の平準化、一般的には聞きなれない言葉なんですが、平たく言うとどういうことか、また、施工時期を平準化すると公共事業の従事者に具体的にどのような利点が生まれるのか、ぜひ関係者や国民の皆さんにわかりやすく説明していただけるでしょうか。
○中野委員 清水先生にお答え申し上げます。
公共工事につきましては、通常、年度ごとの予算により事業執行を行っていることから、年度の初めには工事量が少なくなる一方で、年度末には工事量が多くなるという傾向がございます。公共工事の施工時期の平準化とは、年間を通じまして、こうした工事量の偏りをできるだけ小さくするということでございます。
工事量の偏りが生じることで、工事の閑散期におきましては、仕事が不足をしまして、公共工事等の従事者の収入が減る可能性が懸念される一方、繁忙期におきましては、仕事量が過大になりまして、公共工事等の従事者の長時間労働や休暇がとりにくくなることなどにつながってまいります。また、資機材につきましても、閑散期には余剰が生じ、繁忙期には資機材の需要が高くなることによって円滑な調達が困難となる等の弊害が見受けられるところでございます。
今回の改正法案では、公共工事等の施工時期の平準化を図るため、発注者に対しまして、計画的な発注や繰越明許費、債務負担行為を活用した翌年度にわたる工期等の設定を求めており、これにより公共工事等の従事者の処遇改善や資機材の有効活用などが図られ、建設業の働き方改革、担い手確保などに大きく貢献するものと考えております。
○清水委員 ありがとうございました。
続いて、津村啓介議員にお尋ねしたいと思います。
本法案の第三条第八項では、公共工事に従事する者の賃金、労働時間、安全衛生その他の労働環境の適正な整備について配慮することで公共工事の品質を確保するという内容がございます。
公共工事の従事者には雇用契約のない一人親方なども当然含まれるわけで、雇用保険に入らない一人親方につきましても労働時間や安全衛生を守るルールが必要だと思います。
一人親方の賃金、労働時間、安全衛生その他の労働環境の適正な整備は、今後どのように具体的に図られるべきだとお考えでしょうか。
○津村委員 御質問ありがとうございます。
御指摘のとおり、公共工事の品質確保に当たりましては、一人親方を含む公共工事に従事する方々の賃金、労働時間その他の労働条件、安全衛生その他の労働環境の適正な整備が図られることが重要でございます。
このため、今回の改正法案におきましては、公共工事等における請負契約の当事者が、下請契約を含めて、市場における労務の取引価格や社会保険料等を的確に反映した適正な額、適正な工期等での公正な契約を締結することを規定しています。
この規定に基づいて適正な契約がなされれば、契約の当事者である一人親方の労働環境についても改善が図られるものと考えております。
今回の改正を踏まえて、適正な額の請負代金、工期等での請負契約の締結が徹底され、一人親方を含む全ての公共工事等に従事する方の労働環境の整備が図られることを期待しております。
ありがとうございます。
○清水委員 最後に、盛山正仁議員にお伺いしたいと思います。
これまでも、災害時の応急、復興等の対策には、随意契約や指名競争入札を行ってきたわけです。そして、これらの契約では、手続の透明性、公正性確保を図るために、これまでも国土交通省がガイドラインをつくってきたと思うんですね。
この法案では、改めて条文で、発注者は、緊急性に応じた随意契約、指名競争入札等適切な契約方法を選択することとしています。
従来行われてきたことを改めて条文に書き込んだわけなんですが、現場の地方自治体にとっての意義、あるいは手続の透明性や公平性の確保との関係も含めまして、御説明いただけるでしょうか。
○盛山委員 被災地においての迅速かつ円滑な応急対策、復旧復興のため、応急対策や復旧に当たりましては、早期かつ確実な施工が可能なものを短期間で選定するということが何より大変大事でございます。
これまでも、国の直轄工事を中心として、手続の透明性、公正性に留意しながら、緊急性に応じた随意契約、指名競争入札の活用を図ってきたところは、委員の御指摘のとおりでございます。
しかしながら、会計法令上、契約に係る方式は一般競争契約が原則とされておりますので、このため、地方公共団体によっては、どのような工事を対象として、どの程度の期間、随意契約等を活用してよいかわからず、これではちょっと不安であるという声も聞いているところでございます。
そこで、今回、法律におきまして、災害応急対策、災害復旧における随意契約等の活用につきまして、発注者等の責務として明確に規定することといたしました。これによりまして、地方公共団体も安心して災害時に随意契約等を活用することが可能になるものと考えております。
もちろん、委員、御懸念のとおりというんでしょうか、御懸念がないように、手続の透明性、公正性の確保は大変重要でございますので、それらに留意することを法律上明記しております。
また、迅速かつ円滑な災害応急対策、復旧の実現のためには、日ごろから、つまり平素からの備えが重要でございます。急になかなかそう簡単にできるというものではございませんものですから、建設業者団体等との災害協定の締結についても、つまり、転ばぬ先のつえというか、平素からそういうような災害協定の締結をすることにつきましても、発注者等の責務として位置づけているところでございます。
今回の改正によりまして、災害応急対策、復旧における緊急性に応じた随意契約等の活用が、適切な形で都道府県、市町村へも浸透しまして、被災地における迅速かつ円滑な応急対策、復旧復興が図られることになることを期待しているところでございます。
○清水委員 ありがとうございます。
発注者側の安心につながり、災害時の迅速な復旧に資するものだということがよくわかりました。
発議者の方々への質問により、本改定案が公共工事の品質確保に資するものだということも理解できました。
発注者の責務として、適正な請負代金と適正な工期による請負契約の締結を本改定案の基本理念に据えたことは重要だと考えます。長時間労働をなくし、労働災害を防止していく上でも必要なことだと考えます。
建設現場では転落事故などの労務災害が多発しており、若い人たちが入職を敬遠する大きな要素ともなってきました。建設労働者の団体からは、手すり優先の足場を義務化し、足場組立て後の点検を専門家に委ねることなどを求める声も出されております。
公共工事における品質確保を促進していくとともに、民間発注工事においても建設労働者の安全衛生その他労働環境を整備していくために、日本共産党も全力を尽くす決意を表明いたしまして、質問を終わらせていただきます。
ありがとうございました。
配布資料 2019052201 2019052202