3月2日、衆院本会議で所得税法案と公債発行特例法案に対する反対討論を行いました。討論内容をご紹介いたします。
私は日本共産党を代表して、所得税法等の一部を改正する法律案、及び財政運営に必要な財源の確保を図るための公債の発行の特例に関する法律の一部を改正する法律案について、反対の討論を行います。
はじめに、所得税法等改正案についてです。反対理由の第一は、コロナで苦しむ国民に対する税制支援が不十分だからです。
今回の税制改正は、「ポストコロナに向けた経済構造の転換」をかかげ、売上の減少が見込まれる中でも減税額を増やしたいという財界の要望に応える形で、企業のデジタル化やカーボンニュートラルに向けた投資への減税を措置しています。しかし、コロナ禍で優先して行うべきは、一昨年の消費税増税で苦しんでいる国民生活を支え、その負担を軽減することであります。
消費税は、食料品、生活必需品や光熱費など、暮らしに不可欠な支出にも課税され、コロナ禍で苦境にあえぐ国民にも容赦がありません。納税猶予の特例により、もっとも滞納を余儀なくされている税目が消費税であることを見ても明らかです。
消費税減税は、新型コロナの影響を最も深刻な形で受けている所得の少ない人と中小零細企業への効果的支援になるものです。すでに世界50か国以上で消費税減税が実施されています。政府は消費税5%への緊急減税を決断するべきです。
第二の理由は、不公平税制にメスが入っていないことです。
安倍政権以降、富の集中が進み、資産格差が拡大しています。野村総研の資料によると、純金融資産5億円以上を保有する超富裕層の総資産は倍になり、2019年にはわずか8.7万世帯で100兆円近い資産を保有しています。
にもかかわらず、本法案は、金融所得課税の見直しにまったく触れていません。麻生財務大臣は、来年度以降に検討すると言いましたが、株価がバブル期に迫る高値となっている今こそ、証券優遇措置を抜本的に見直し、所得が1億円を超える高額所得者ほど税負担が軽くなるという、いびつな税制にメスを入れるべきであります。
大企業優遇税制も問題です。法案には、財界の要望に応えてDX(デジタルトランスフォーメーション)投資 促進税制の創設で110億円の減税が、研究開発減税の見直しで240億円の減税などが盛り込まれましたが、中小の赤字企業は、税額控除や特別償却の枠をいくら広げても使えません。
体力のある大企業向けの優遇を拡大すれば、さらに法人税収が空洞化するだけです。大企業の法人所得が毎年、過去最高を更新しながらも、法人税収が増えない不公平税制の是正こそ求められています。
つぎに、公債発行特例法案についてです。この法案は、2021年度から2025年度までの5年間、特例公債の発行を自動的に認めようというものです。財政法第4条は原則、公債や借入金を認めていません。
これは、過去の戦争で、戦費調達のために大量の国債を発行し、国家財政と国民生活を破綻させた、痛苦の教訓によるものです。かろうじて認められるのは、財政規律を保つための最低限の措置として、その都度国会の承認を得たものに限られます。
5年にわたって特例公債の発行を認めればどうなるか。参考人として陳述された山田博文群馬大学名誉教授は、「国債が雪だるま式に膨張すると国債費が増大し、生活関連予算が圧縮される」と指摘しました。
麻生財務大臣は、無尽蔵な国債発行はおこなわないと強弁しましたが、予算編成の内容は、ときの政権の判断にゆだねられており、歯止めがかかる保障はまったくありません。
財政規律を保つための最低限の措置を逸脱し、国会のチェック機能を今後5年にわたって奪うことは、議会制民主主義の重大な蹂躙であり、とうてい認めることはできません。