社会的理性を失った資本主義の暴走
8月3日の夜から4日にかけて、リニア中央新幹線の建設計画が進められている長野県大鹿村で、トンネル工事の現場や残土置場の予定地を視察。JR東海の工事事務所や大鹿村役場、中央構造線博物館などを訪問し、懇談や聞き取り調査を行いました。
視察には、もとむら伸子衆議院議員、山添拓参議院議員、武田良介参議院議員が参加しました。地元で活動する地方議員のみなさん、事務局のみなさんにも大変お世話になりました。
南アルプスの山々をトンネルでブチ抜くリニア中央新幹線の事業計画は、水枯れや水質汚濁など、環境の破壊を招くのではないかと、地元住民のみなさんから不安の声が上がっています。
〃日本一美しい村〃と呼ばれる大鹿村もリニア新幹線のルートとなり、本体工事が始まればトンネルから掘り出した土砂を積んだトラックが一日に1,350台も村の中を行き交う計画となっています。
大鹿村全体で搬出される約300万立方メートルもの残土については、最終処分地も未確定のままだということも、JR東海の工事事務所からの聞き取りで明らかになりました。
活断層が幾重にも重なっている地帯の地下空間を時速500キロメートルで疾走する乗り物を走らせることに危険性がないと言い切れるのでしょうか。
今回、初めて目の当たりにした大鹿村の雄大な景色と澄んだ空気に神々しさを感じた私は、リニア計画が自然に対する冒涜ではないかとさえ思ってしまいました。
技術の進歩はたしかに私たちの社会生活を便利にしてきました。しかし、治水や利水という目的を見失ってまでダムをつくることや、核のゴミの処理方法さえ定まらないのに原発依存から抜け出せない現実は、社会的理性を失った資本主義の暴走と言え、リニア単体では赤字になるとJR東海の元社長が言明し、技術的にも確立しているとは言えない事業に公的資金を9兆円も貸し付ける所業も同様だと指摘したい。
長野県内にリニアの駅が新設されれば、大鹿村の観光も振興するとの見方もあるようですが、むしろ逆です。リニア新幹線は、東海道新幹線以上に都市部への人口集中を促進させ、地方をいっそう衰退させる危険性をはらんでいるです。
人口およそ1,000人の大鹿村ですが、自然景勝地が豊かなだけでなく、村人自身が俳優となり、村をあげて地芝居の伝統を守り続けてきたことが、大鹿歌舞伎として広く知られ、毎年二度の公演には、村民を超える観客が押し寄せているというではありませんか。
少し不便だけど、それがいい。大鹿村をPRするそんなコピーも見かけました。リニアなどに依存せず、必要な観光政策やインフラ整備は国や県の支援を受けて進めていけばいいのです。
リニア新幹線の本体工事はまだ始まっていません。今回の視察調査を糧にして、これからも「私たちの街にリニアはいらない」と声を上げる地域住民のみなさんの願いをしっかりと国政に届けていきます。