幻となった【カジノ解禁推進法案の修正案に対する質問原稿】です。
2016年12月14日 日本共産党 清水忠史
私は日本共産党を代表して、カジノ解禁推進法案の修正案に対する質疑を行います。
参議院では突然、修正案が持ち出され、質疑もなしに採決が強行されました。衆議院では、原案がわずか6時間たらずの質疑で強行されたものです。国民の多数が反対し、主要五大紙がそろって社説で批判的な論調を掲載した、カジノ解禁推進法案を、このような拙速・強引なやり方で押し通そうとする推進勢力の姿勢に、満身の怒りを込めて抗議いたします。
そもそもカジノは、刑法に違反する民間賭博です。従来、法務省は厳しい要件を示し、公的主体のものに限って競馬法や競輪法など特別法を定め、賭博を認めてきました。民間を主体にした賭博を認めた例はありません。カジノ施設の運営主体は、民間事業者です。彼らは日本でのカジノ解禁が、自らの収益を上げる投資の対象であることを隠していないのです。法務省の見解に照らしても、民間賭博の解禁は、不可能なはずです。本修正案で、カジノ賭博の違法性は阻却されるのですか。答弁を求めます。
私は、内閣委員会の質疑において、ギャンブル依存・パチンコ依存を要因とする犯罪件数が去年一年間に1702件も起こったことを明らかにしました。カジノ施設を利用することに伴う悪影響としては、いま述べた犯罪の誘発だけではなく、勤労意欲の減退、多重債務者の増加、離婚などの家庭崩壊、果ては自殺など、多岐にわたることが明らかになっています。
NPO法人「ギャンブル依存症ファミリーセンターピープル」の町田政明理事長は、「依存症は治療に何年もかかり、回復率も悪い。恐ろしさを知れば、新たにカジノを造ることなど考えられないはずだ」と指摘し、法案に反対しています。修正案では、「ギャンブル依存症の悪影響を受けることを防止するために必要な措置を講じる」としていますが、いったい何をどう講じるのですか。
カジノという新しい賭博を解禁することにより、ギャンブル依存症が増えるのは必然です。仮に、依存症になってしまったひとを、カジノ施設に入場させない措置や、治療に結びつけることはできたとしても、それは事後の対策であり、修正案が示すような依存症の防止にはなりません。カジノの収益で依存症対策を講じることも想定しているとのことですが、これは違法薬物を合法化し、その収益で薬物依存対策をやるといったことに等しい、愚の骨頂です。
カジノ依存症を防止するためには、カジノを解禁しないことが、一番の対策になるのではありませんか。防止できるというのであれば、その具体的方策をお答えください。
さらに、修正案では、「施行後5年以内を目途として必要な見直しを行う」としています。これはどういう意味ですか。法施行後に政府が講じるとされる実施法も含め、法案全体の見直しを前提とすることは、国民の懸念に応えきれていないということの証明ではありませんか。開業後、施設内で48人もの自殺者を出した韓国のカジノや、巨額のマネーロンダリングが行われてきたマカオなど、海外の例からも明らかなように、どのような見直しをしようとも、カジノがもたらす社会的害悪を取り除くことは不可能ではありませんか。答弁を求めます。
読売新聞の世論調査では、57%がカジノ解禁に反対と答え、NHKの調査では賛成と答えたひとはわずか12%です。カジノ万博が狙われている大阪府においても、52%が反対しているのです。これら国民の声にしっかりと向き合うべきです。
国内のカジノ推進派である大阪商業大学の谷岡一郎学長は、「高齢者のタンス預金など世の中に出にくいお金が回り始める」と述べています。アメリカでは郊外にできたカジノが、都市部のお年寄りをバスで送迎するサービスを始めた結果、年金をカジノにつぎ込むひとが出てきて問題化しているそうですが、日本でも年金カットによる不足分を補おうと、カジノにのめりこむ高齢者が生まれることは、容易に想像できることです。
持統天皇発令の双六禁止令以来、賭博を禁じてきた日本の伝統を根底から壊し、国民生活と日本経済に社会的害悪をまき散らす、カジノ解禁推進法案は断固・廃案にするべきです。このことを強く求めて、私の質問を終わります。