活動報告

許さない! 定義なき「部落差別」は際限のない乱用を生む

[活動報告]2016/05/27 更新

徹夜で論戦準備に臨んだからでしょうか、ずいぶん寝不足顔での委員会質疑となりました。

会期末に突如として三会派(自民・民進・公明)によって提出された「部落差別解消推進法案」は、前日まで、私の質疑終了後に採決を強行することが決められていましたが、参議院に送付しても採決できず廃案になる可能性が出てきたため、突如、次期国会への継続審議となりました。

終局・採決をしないことは当然ですが、国民的議論も行わず、短期間に採決しようとした強引な委員会運営を行い、混乱をもたらした提出会派の責任は極めて重いといわなくてはなりません。

今回の法案は、決して部落差別を解消するものではなく、法律上定義のない「部落差別」について、国と地方公共団体に相談体制の充実、解放教育の推進、実態調査を求める内容となっており、あらたな差別を掘り起し、差別を固定化・永久化するものであり、断じて認めることはできません。

例えばヘイトスピーチ禁止法の審議では、「本邦外出身者に対する差別的言動」とは何か、その「定義」について侃々諤々の議論がおこわわれました。ところが、部落差別解消法案には、その「定義」さえなく、大阪市における、飛鳥会事件や、芦原病院問題を再び起こしかねない、不公正乱脈な同和対策事業の根拠法ともなりかねないものです。

部落問題とは、一部の地域が社会的差別を受けていた江戸時代までの古い身分制度の名残です。これまでも全国部落解放運動連合会は、地域格差の是正、偏見の克服、住民の自立、自由な社会的交流の進展を部落問題の4つの指標とし、社会的運動によってそれらを克服してきたとしています。

いつの時代にも偏見や誤解を持つ人はいますが、そのような言動があったとしても、「そんなん口にすることと違うわ」「いつの時代の話してんねん」と周りの人がたしなめたり批判したりして、社会として通用しなくなる状況を醸成していくことが、部落問題の解決につながっていくのだと思います。

今では大阪府の教育委員会も、生徒から「被差別部落は今もあるのですか」「どこですか」と聞かれたら、「生徒から聞かれたとしても、そんなん今、被差別部落なんてないよという言い方になると思います。どこやと聞かれたら答えないです。かつて差別されたところはあるかもしれませんけど、今はそんなことないよという言い方になります」と答えています。これが今日の到達点であり、同和問題を解決してきた本流ではないでしょうか。

法案提出者は、インターネット上での差別的書き込みが増えたことを立法事実のひとつとしていますが、法務省人権擁護局の調べでも、同和問題に関係した人権侵犯事件での処理件数は増えていません。また、プロバイダー責任法など他の法律で対応すればいいのです。

今は問題があれば、市民相互で解決に取り組むことのできる時代になりました。部落問題に対する非科学的認識や偏見にもとづく言動が、その地域社会で受け入れられない状況がつくりだされることが重要なのであり、「部落」と「部落外」をあらためて分け隔てるような法律は必要ありません。

政府は16兆円以上の予算を投じ、33年間取り組んだ同和対策の特別法を2002年3月末で終結しています。全国の精緻な生活実態調査と国民意識調査を実施・分析し、審議会で各界からの意見聴取もして議論を重ね、万全を期して終了したのです。

今回の法案は、その歴史的経緯や関係者の努力を乱暴に踏みにじり、同和問題の解決に逆流を持ち込むものであり、絶対に認められません。継続ではなく、廃案にするべきものなのです。

以下、26日付・しんぶん赤旗の記事を紹介いたします。

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「部落差別」永久化法案(「部落差別解消推進法案」)が審議入りした衆院法務委員会で25日、日本共産党の清水忠史議員は「同和問題の解消に血のにじむ努力を続けてきた方々を裏切る法案であり、絶対に許せない」と廃案を強く求めました。

この日、質疑に立ったのは清水議員ただ1人。自民、公明、民進が成立を狙う法案に、部落解放同盟が利権をあさる同和行政の是正に取り組んできた地方議員や団体から「亡霊がよみがえった」「これまでの運動に逆行する」と怒りの声が広がっています。

同和立法は、2002年3月末に終結し、特別対策から一般対策に移されました。理由をただした清水氏に、総務省の佐伯修司官房審議官は、同和地区をとりまく状況が変化し、差別解消に有効でないとする当時の政府見解を説明しました。

清水氏は、法案提出者の自民党・山口壮議員に、これまでの経過に逆行すると批判し、「二階俊博総務会長の意向を受けた同和行政の新たな根拠法の制定が動機ではないか」とただしました。

さらに、法案上の「部落差別」の定義について追及。山口氏は「法律上の定義を置かずとも部落差別の意味は極めて明快」などと強弁。清水氏は「とんでもない。誰かが主観的に『部落差別』だと認定すれば際限なく乱用を生み、同和事業の復活や脅迫的な確認・糾弾活動の根拠となりうる」と厳しく批判。

法案の深刻な問題は、定義がないまま行う「部落問題」の実態調査で新たな差別を掘り起こすことだと強調。出身地や血筋の特定、部落問題のなかった地域での追跡調査につながる危険を指摘しました。

清水氏は、自民党政務調査会が1986年に出した「部落差別の解消を目的とした法律を基本法として制定することは、その被差別対象地域及び住民を法的に固定化させる」との文書を示し、重ねて廃案を求めました。

以上